花々の詩歌―2013年リニューアル

 監修:中村稔

2005年開催の同名展をリニューアル。四季の花々にちなんだ詩・短歌・俳句を、作者自身による揮毫を中心にご紹介します。近代の日本を代表する文豪から、現代を代表する詩人・俳人・歌人たちまでの作品が、一堂に会する展観です(本展のための揮毫も多数)。

短冊の「あるほどの菊なげ入れよ棺の中」は夏目漱石の揮毫。「修善寺の大患」後の入院中に大塚楠緒子の死を知った漱石が「手向の句」として日記に記した俳句です。夏目漱石「あるほどの菊なけ入れよ棺の中」

 

一方、萩原朔太郎の「ソライロノハナ」は 420首あまりの歌を収録し、恋人に贈った手作りの歌集で、朔太郎の没後35年を経て発見されたもの。「たはかれどきの薄あかりと 空いろの花のわれの想 ひを たれ一人知るひともありやなしや」と始まる詩「空いろの花」は、若き日の朔太郎のみずみずしい感情を、筆跡を含めて味わうことができます。

萩原朔太郎「ソライロノハナ」空色の花

そのほか、芥川龍之介による画軸、高村光太郎による雑誌『明星』の扉絵原画なども。

 

部門構成と主な出品資料

(第一部 早春)

金子兜太 俳句「梅咲いて・・・」軸

萩原朔太郎 自作歌集「ソライロノハナ」

与謝野寛 短歌「手ずれたる銀の箔をば見るごとくまはらに光る猫柳かな」軸

 (第二部 春)

芥川龍之介 俳句「花散るやまぼしさうなる菊池寛」軸

佐佐木幸綱 短歌「満開の桜ずずんと・・・」軸

高村光太郎 第二次『明星』扉絵原画

(第三部 初夏)

芥川龍之介 詩「またたちかへる水無月の」額装

有島武郎 短歌「明日知らぬ命の際に思ふこと色に出つらむあしさいの花」短冊

北原白秋 短歌「白南風のてりはののばらすぎにけりかはづのこゑも田にしめりつゝ」軸

(第四部 夏)

栗木京子 短歌「みづからをこの世に・・・」色紙

杉田久女 俳句「谺して山ほとゝぎすほしいまゝ」団扇(裏面に葛の花の絵)

原民喜 詩「碑銘」1949年発行の小説『夏の花』著者自家用本への書き込み

(第五部 秋から冬へ)

黒田杏子 俳句「水仙の・・・」色紙

永田和宏 短歌「たったひとり君だけが・・・」軸

夏目漱石 俳句「あるほどの菊なげ入れよ棺の中」短冊

林芙美子 「花のいのちはみじかくて 苦しきことのみ多かりき」半紙

青土社より『花々の詩歌』刊行(2013.4.20刊行)

当館でもお求めになれます。2050円(8%税込)+送料実費

『花々の詩歌』
『花々の詩歌』