教科書のなかの文学/教室のそとの文学Ⅰ──芥川龍之介「羅生門」とその時代

6/24(土)~9/9(土)開催

開館時間 午前9時30分~午後4時30分(入館は午後4時まで)
観 覧 料 一般300円、中高生100円 ※予約不要
休 館 日 日曜日・月曜日・7/18(火)・7/27(木)・8/24(木)
※7/17(月・祝)は開館
編集委員 庄司達也・紅野謙介
*本展は2017年夏に開催した展覧会をベースに、新たな資料を加えて再構成したものです。複製資料を中心に展示しています。

 

第一部 芥川龍之介「羅生門」とその広がり

今や、「教科書のなかの文学」――国語教科書に載る教材ということを通して、芥川龍之介の「羅生門」は日本で学ぶ多くの人々に知られている。
1915(大正4)年に発表されたこの作品が、国語教科書に初めて載ったのは、1957(昭和32)年のことだ。第二次世界大戦以前には小説が教材化されることはめずらしかったが、この年、夏目漱石「こころ」や森鷗外「舞姫」と同時に、教科書に採用されたのである。その後、高度経済成長期を迎えた社会を背景に、芥川龍之介「羅生門」は多くの教科書に採用される定番教材への道を歩み始めた。今日においても、その状況は続いている。なかでも「羅生門」は高校一年生を対象とする教科書に掲載され、文学への案内役をつとめてきたのである。今般、国語教育はその改革の中で大きな曲がり角に立たされている。その流れを問い直すということでも、作品「羅生門」は大きな役割を担う教材なのではないだろうか。
本展は、60年以上もの間、教材として教室で読み継がれてきた「羅生門」を取り上げ、この小説の誕生、背景、作者芥川龍之介の生涯などに光を当て、また、採用された教科書の展示や、二次創作としての演劇、映画、オペラなどの多彩なメディアでの展開について紹介することで、「羅生門」の21世紀における新たな魅力を見出そうとするものである。

(編集委員 庄司達也)

 

【展示構成と主な出品資料】(*はレプリカの資料)

Ⅰ 「羅生門」誕生
「羅生門」草稿(山梨県立文学館蔵)*
「羅生門」関連ノート(山梨県立文学館蔵)*
雑誌「帝国文学」
初版本『羅生門』『鼻』
「羅生門」出版記念会関連写真

Ⅱ 「羅生門」の背景
井上光圀編『校註国文叢書 今昔物語』
芥川龍之介・久米正雄宛夏目漱石書簡 *

Ⅲ 芥川龍之介の生涯
耕牧舎関連書類(写真パネル)
中国旅行中の手帖(藤沢市文書館蔵)*
『近代日本文芸読本』
「仙人」原稿の自画像(写真パネル、田端文士村記念館蔵)

Ⅳ 教科書のなかの「羅生門」
「羅生門」掲載教科書
教科書掲載の芥川作品紹介

Ⅴ 広がる「羅生門」の世界
映画、舞台、漫画化関連資料

 

第二部 文学の歴史を眺める──小説を中心に

どんな作家も過去の文学をまったく読まずにゼロから創作することはできない。先行するモデルがあって、それをトレースしながら新しい文学が生み出される。言うならば、文学の歴史は「読むこと」と「書くこと」を順番にくりかえすサイクルのなかで展開されてきたのである。では、芥川龍之介の「羅生門」が登場する以前はどうなっていたのだろうか。小説を中心に文学の歴史をふりかえってみよう。

                                   (編集委員 紅野謙介)

【展示構成と主な出品資料】

Ⅰ 江戸から明治へ、読み物は姿を変えて
仮名垣魯文『安愚楽鍋』、 矢野龍渓『経国美談』

Ⅱ 小説とは何か、新しい輪郭を探る
坪内逍遙『小説神髄』『当世書生気質』

Ⅲ 活字の時代、雑誌と新聞の隆盛
「国民之友」「太陽」「文芸倶楽部」

Ⅳ 小説が時代の先端だった
国木田独歩『武蔵野』、夏目漱石『吾輩は猫である』

Ⅴ 社会をみだす文学
永井荷風『ふらんす物語』、「滑稽新聞」